多様性を尊重する組織はすべてを受け入れるわけではない!?

はじめに
近年、企業における多様性の尊重が重要視されています。その背景には、社会的な価値観の変化に適応するという側面と、多様な背景や考え方を持つ人々が集まることでイノベーションが生まれ、競争力が向上するという期待があります。しかし、多様性を尊重することは、単にすべてを受け入れることではありません。今回は、組織としての共通の価値観の重要性と、多様性を尊重しながらも一貫性を保つ方法について考察します。

 

多様性を尊重するとは何か?
多様な価値観や考え方を尊重することは、組織がすべてを受け入れることを意味するわけではありません。組織として受け入れがたい価値観を明確にすることも、ある面では多様性を尊重しているといえます。

「あなたがそれを大切にしていることは理解できるし、それ自体を否定する権利は私たちにはない。ただ、私たちが大切にしたい価値観とは大きく異なるため、一緒のチームとなるのは難しい。」

と、このようなスタンスです。

組織における多様性の尊重とは、共通の目的や価値観をもつ多様な人々が、異なる意見や背景を持つ人々が協力し合い、共に成長することを目指すことです。具体的には、以下の点が重要です。

1.ミッション・ビジョン・バリュー(VMV)の明確化
組織の存在意義や目指すべき方向性を定義します。
★自分たちは、誰のどんな役に立つために存在しているのか?
★自分たちは、どのような未来を実現したいのか?
★自分たちは、どのような価値観を大切にし続けるのか?

などを問いかけながら、チームとしての核となるもの。チームの一員であれば誰もが大切にすべきことは何かを明らかにします。

2.価値観の共有と浸透
全てのメンバーに対して、これらの価値観を共有し、日常業務にどう反映させるかを体験してもらいます。
★日々の判断基準や行動指針として、VMVを具体化する。
★日々の選択・決断において、VMVに基づき考えることを促す。一緒に考える。
★定期的に自分たちの仕事を振り返り、VMVを大切にしているのか?大きく離れてしまっていないか?を確認し、修正していく。

などの取り組みを日常的に行います。

3.異なる意見を尊重しつつもVMVに基づく判断を重視する
日々の仕事においては、共通の価値観の範囲内で個々のアイデアや働き方を尊重します。
例えば「すべてにおいて安全を最優先とする」共通の価値観がある場合、そのためにどのような方法を取るかは個人の自由に任せます。

何でもありではなく、共通の価値観に基づく自由な発想や意見を尊重する。ということです。

価値観は多様で、背反するものやジレンマを生むようなものも少なくありません。例えば、効率性を重視するあまり、安全性が損なわれてしまうような状況が発生することもあります。

そのような場合には、どちらの価値観を重視するかを状況に応じて明確にすることが重要です。
また、対話を重ねて、妥協点や創造的な解決策を見つける努力が求められます。

まとめ
多様性を尊重する組織を構築することは、現代の企業にとって重要な課題です。しかし、すべてを受け入れることが必ずしも正解ではありません。共通の価値観を明確にし、何を大切にし、何を尊重するのかを明らかにすることが、組織の一貫性と多様性の尊重を両立させる鍵となります。相反する価値観が存在することを理解し、適切に対処することで、持続可能な成長を実現することができる。そう実感しています。

2024/06/12
writer

伊藤 史紀

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