パーフェクトヒューマンからシェアドリーダーシップへ

リーダーシップ

理想のリーダー像と現実のギャップ

二十代の頃、急成長する会社の中で、

当時の自分の実力では不相応な役割を任せられたことがありました。

なんとかその役割を果たそうと、ビジネス書を読み漁り、

社会に大きな影響を与えたリーダー達の自伝から学び、

自分もそうあろうと努力する日々。

しかし、

実際には得手不得手があり、頑張ろうとしすぎて空回りしたり、

メンバーのためを思ってやったことが裏目に出たり・・・。

いいリーダーになろう!いいチームを作ろう!と動くほどに、メンバーは離れていく。

目指す理想のリーダー像と、現実の自分のギャップに落ち込みました。

 

状況によって求められるリーダー像は変わる

緊急時においては、

冷静に、状況の変化を把握しながら即断即決即行動できるようなリーダーが向いているかもしれない。

平常時においては、

皆の意見に耳を傾け、意見の違いの背景にある価値観やおもいに寄り添い、関係者皆が納得のいく結論に導くようなリーダーが向いているかもしれない。

これまでにない課題解決に挑むチームのリーダーは、

活動的で周囲を巻き込むのがうまく、試行錯誤を繰り返しながら正解を見つけるのが上手いリーダーが向いているかもしれない。

数十年続いている定型業務が中心の部署のリーダーは、

日々穏やかに過ごし、小さな改善を重ねることを推奨し、自らも実践しながら、メンバーとの日常会話を楽しむようなリーダーが向いているかもしれない。

このように、事態の緊急度や仕事の特性によって、求められるリーダー像は変わります。

 

その当時、私が務めていた企業は、

急成長するベンチャーである一方で、

ITバブルの崩壊や関連する法律の改定など、

外部環境が大きく変化し、

その対応に追われていました。

緊急事態となり、定型業務が減り、創造・革新的な業務が増えていく中で、

その劇的な変化についていくことが出来ない自分がいました。

そのようなとき、

状況対応型リーダーシップ

という考え方に出会い、深く共感したことを覚えています。

理想のリーダー像は一つではない。

例えば、部下の状況によってもそれは変化する。

さらに、

部下の状況に応じて接し方が変わるのはわかるけど、

外部環境が劇的に変化し、仕事の内容が大きく変わるような状況に対応するには、

もっと別の考え方が必要だとも感じていました。

 

理想のリーダー像は一つではなく、状況に応じたリーダーシップスタイルを選択する必要がある。

それを分かったうえで、

相も変わらず、

その全ての状況に完璧に対応できるパーフェクトヒューマンを目指している自分もいました。

 

リーダーシップをシェアする

パーフェクトヒューマンを目指すものの、まったく上手くいかない。

そんな自分自身の至らなさに打ちひしがれていたとき、

手を差し伸べてくれたのはチームメンバーでした。

私が苦手としているお客様に対して、笑いも交えながらうまく対処してくれる。

自分でやると数時間かかる仕事を、さらっと30分ぐらいで苦にもせず処理してくれる。

会議が行き詰ったとき、論点を整理して、解決案までうまくまとめてくれる。

そんなチームメンバーに支えられながらビジネスの状況を立て直す中で、

「結局のところ、人生経験も浅い二十代の自分にできることは非常に限られている。

もっと経験豊富で、個性豊かなメンバーに頼って良かったんだなぁ」

と思えた頃から、

チームの雰囲気が大きく変わったと感じています。

 

すべての状況で最高の結果に導く「パーフェクトヒューマン」

リーダーシップの話をしていると、

パーフェクトヒューマンのような人物像を(無意識的に)求めていることがあります。

例えば、部署長の役割について話をしているとき、

 

などなど、次々に「求めるもの」が挙がります。

しかし、

それを所属長に求めることが、

組織を不健全な方向に追いやっている可能性があります。

完璧でない自分に悩む所属長。

完璧でない所属長に不満を募らす部下たち。

そのような関係を作り出してしまうと、お互いが不幸になってしまう可能性がある。

ということです。

組織論・人材育成論を次の段階へ進化させる

シェアド・リーダーシップという考え方があります。

パーフェクトヒューマンが率いるチームを目指すのではなく、

共通の目的達成のために、多様で個性豊かなメンバー同士が、

そのときその状況に合わせて、それぞれのリーダーシップを発揮していく。

ざっくり書くと、そのような考え方です。

経済学が、

パーフェクトヒューマンを前提とした理論から、

ヒューマン(普通の人)を前提とした行動経済学へと発展したように、

組織開発・人材開発分野においても、

多様で個性豊かな人々が、時に怠惰で感情的な人々が、

どうすれば共通の目的・目標達成のために相乗効果を発揮できるのか?

どうすれば、それをうまく促せるのか?

へとシフトしてきています。

自分にも相手にも完璧を求めるのではなく、

至らない点も含めて認め合い、

それぞれの特徴を生かした関わり方を見つけていく。

 

そんな組織のあり方、人材育成のあり方を模索する人たちの力になる。

それが、自分の失敗経験も踏まえたうえで考える、自分の使命だと考えています。

2021/02/28
writer

伊藤 史紀

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