こんにちは。Co-Labの五十嵐です。
2019年5月21日、2019年度人材マネジメント部会の第2回研究会(東京会場)にお邪魔してきました。
初回に引き続き、Co-Labの伊藤が、幹事団のひとりとして進行役を勤めています。
毎回濃厚な内容になっていますので、今回もその様子をレポートしたいと思います。
会場は初回と同様、コレド日本橋内にあるWASEDA NEO。
この日はあいにくの天気でしたが、群馬、新潟、長野より12自治体、35名が集合しました。
この日のテーマは、主に「合意形成」と「問いかけ」です。
前回の「対話」「論拠」から一歩進んで、組織変革を実践していくために必要なスキルを扱います。
集団意思決定のワナ
最初に鬼澤幹事長より、「集団で合意形成する時に陥るワナ」についてお話しがありました。
当部会は、同じ自治体から参加した2〜3名と、もしくは他の自治体メンバーと、そして自身が所属している自治体の関係者と、集団で対話をしながら一緒に知恵を出し合って進めていく場です。
その時々で、「集団」で話し合い、全員で「合意形成」していくことになるわけですが、その途中で、陥りがちなワナというものがあります。
代表的なものは
- 社会的手抜き(集団のなかに全力をださない人がいる)
- 過剰忖度(必要以上にお互いの顔色を伺う)
- リスキーシフト(集団になることで妙に気が大きくなる)
- 同調圧力(ひとりが周りに強引に同意を促す、もしくは無意識に扇動してしまう)
- 頑固な少数派(かたくなに意見を曲げない人がいる)
どれも、思い当たるフシがありそうなことばかり。
そんな人がいて困ったということもあれば、自分自身がついやってしまうということもあるのではないでしょうか。
これらを回避するために有効なのは、あらかじめそのリスクを認識しておくことです。
事前にそのリスクを確認し合うことで、いざ直面してもお互いに注意し合うことができるからです。
その上で、最終的に意見をまとめる際の決定方法を
- 多数決
- コンセンサス
- 最後はリーダーが決断する
などから事前に決めておき、それをブラさないようにすることが、合意形成をスムーズに進めるコツ、とのことでした。
まずは課題の振り返り
進行役を伊藤に代わり、まずは前回だされた課題の振り返りです。
初回の部会では、終わりに各自治体の人口推移などの現状調査を行う宿題が出されたのですが、その作業を通して、感じたことをグループ内で共有します。
- 課題に取り組んでみて、自分達の組織について、誇りに思ったこと、残念に思ったこと
- 皆さんの街に30年後も人が住み続ける理由を3つ挙げるとしたら、それはどのようなものですか?
ここで「誇り」や「残念」と感じるポイントは、その地域の特性であったり、組織の風土であったりさまざまだったようですが、それはすなわち今後の自治体経営において「ウリ」や「ネック」になるだろう点でもあります。
ただし、重要なことは今現在を踏まえた上で、さらなる未来を見極めることです。
例えば、この日の参加自治体は、どちらかと言えば「田舎」「地方」と呼ばれるところがほとんどだったので、人口減少に伴う課題をあげる地域は多かったのでは、と思います。
ただ、人口に関していうと、現在は東京都が最も人口の多い都道府県と誰もが知っていますが、明治時代以降の歴史を振り返ると、実は最も多い都道府県が東京都ではなかった時期も長いのです。
比較的長い間、人口が最も多い都道府県だったのは新潟県。
今の感覚ではやや信じられませんが、当時の主要産業がコメ栽培だったことや、新潟は物流ルートの中心だったことを考えると、当然と言えば当然。
このように、時代の変化とともに産業構造や経済の状況は変化します。
これからの時代を考えると、「移動」に関する手段はますます進化することは明らかで、ビジネスや観光にとって、物理的な距離は不利には働かなくなっていくでしょう。
となるとその分、その地域にしかない美しい景観や文化こそが不可欠になるかもしれないし、もっと別の産業の中心地が繁盛する可能性もあります。
現時点での「誇り」や「残念」なポイントは、数十年後には入れ替わっている可能性が多いにあるのです。
だからこそ、これからの自治体に必要とされることは、その未来を正確に見据える力。
当部会では、活動を通してその力を身につけることが目標であると確認しました。
問いかけで答えは変わる
午後からは、意思決定に至るまでの「問い」の立て方についてです。
対話をしながら合意形成を目指す時、当然ながらお互い自分のことを一方的にぶつけ合うだけでは前に進まないので、その対話の大部分は、「誰かが質問をする」「相手がそれに回答する」の繰り返しになるはずです。
ということは、その質問のスキルこそが、スムーズな意形成に至るまでの重要なキーになります。
人は、問いかけ方(問いかけられ方)によって思考が変化します。
例えば、職業について質問される時、以下の3パターンがあったとします。
- あなたの仕事はなんですか?
- あなたの仕事のやりがいはなんですか?
- あなたの仕事は、誰のどんな役にやっていますか?
1の時は「公務員です」「研究者です」など、比較的スムーズに答えられるかもしれませんが、2になるとちょっと時間がかかり、3になると一瞬答えに窮してしまいませんか?
仕事において大事なのは肩書きよりも「提供価値」や「存在価値」ということはわかっているけれど、日常では忘れがち。
こんなふうに突然ポイントを突かれると、人はハタと考え込んでしまうのです。
言い換えれば、問いかけの方法によっては、相手の思考に影響を与え、引き出せる内容が変わってくるということです。
この日の参加者の皆さんは、「組織の現状を捉える」ことをテーマに
- ひたすらたくさんの質問を書き出してみる
- 相手から有効な回答が得られるように、立ち位置を変えながら質問を磨いてみる
- オープンクエスチョンとクローズクエスチョンを入れ替えてみる
- 合意形成に至るための3つの質問をピックアップしてみる
という作業を体験しました。
問いかける相手は、上司なのか先輩なのか、はたまた市長なのか...。
参加者の皆さんが淀みなくペンが走らせていく姿に、仕事への熱意と組織に対して溢れ出てくる想いを感じました。
問いかけをつくる時に注意すべきなのは、質問のなかに自身の想いや価値観が反映してしまいがちなことです。
特に、今回のような「所属する組織の現状」といった、日頃から意識を強くもっているテーマになると、如実にその傾向が現れてしまうのではないでしょうか。
例えば
「今の組織に不足していることってなんですか?」
と問えば、相手は
「この人はなにか不足しているものがあると思っているのだな」
と察知します。
結論を収束させていく際には有効な場合もありますが、そのような質問が続けば、相手は質問をする人に対して特別な印象を感じます。
インタビューや記者会見などで、あまりに偏った質問が続くのを見て、違和感や怒りを覚えた経験のある人も多いはずです。
相手が何か答えを決めつけていたり、誘導したりしていることを察すると、人はそれに対して忖度するか反発するか、いずれにしても本来思っていたこととは違う回答をしてしまうことがあるのです。
そういう事態を避けるために、
- オープンクエスチョンとクローズクエスチョンを上手に使い分ける
- 「強いてあげるとすれば…」といった言い回しを使ってみる
- 抽象的な質問から具体的な質問からへ絞っていく(逆もあり)
など、問いかけのテクニックを上手に使って、スムーズに正しく合意形成に至れると理想的です。
最後は、各チームが導き出した3つの質問をお互いに確認し合いました。
これからの活動に参考になるものはないか、熱心にメモをとったり写真を撮ったりしながら、自治体ごとに相談をしあっていました。
問いかけのスキルを活用する
なお、当部会が問いかけのスキルを重視するのは、組織変革にとって重要だから、というだけではありません。
例えば、地域住民の人と地域のことを話す時。
いろいろな立場の人がいろんな考えを言うので、収束させるのは非常に難しいものですが、上手に問いかけを行うことが、彼らの共通目的を見出して合意形成をはかるために有効に働きます。
さらに言えば、問いかけは、時に「自分自身」に対しても有効です。
例えばとても日常的な場面で
- お昼ご飯なにを食べよう
- なぜその食事を選ぶのだろう
- これを食べることで10年後はどうなるだろう
- 理想的な食事とはなんだろう
と問いかけていくことで、理想的ななりたい自分像が見えてくるかもしれません。
仕事をしている場面でも、与えられた仕事をただやるだけではなく、
- なぜ今この仕事をやるのか?
- この仕事は本当に必要なのか?
- 仕事の優先順位は?
と問いかけることで、本当に必要な仕事と優先順位が見えてくることもあります。
参加者の皆さん個人個人にとっても、この体験が強い武器になったらいいな、と思いました。
第3回は7月に1泊2日での合宿を予定しています。
普段は全国の各会場で参加している自治体も含め、全部で98自治体、約300名が参加し、いよいよ、これまでの現状分析を踏まえた「未来」を考えていくステップに移ります。